日本語の連濁は、長い間国語学界の謎とされてきた
by iwaoka3
カテゴリ
全体
日本語
日本語の連濁
日本人・異文化
未分類
以前の記事
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 07月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
お気に入りブログ
日本人・異文化
メモ帳
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧

後項に濁音のある言葉
 連濁は後項の言葉に濁音がないものにおこる。
後項の言葉の第二音節以下に濁音があるとき、連濁をおこさないことはよく知られている。
この説は古くライマンも述べている。
「かがみ ことば さじ さば しぐれ 仕事 しばい 雀 掃除 旅 つづき つばき たまご 鍵 陰 籠 カバ」
等の言葉が後項にくる複合語は、連濁をおこさない。 
籤クジ  当りくじ 阿弥陀くじ 空カラくじ 宝くじ 貧乏くじ  
籤のように、後項に濁音があれば連濁はおこさない。
「籤引きクジビキ」のように、前項に濁音があっても、後項の言葉に連濁はおきる。
言葉コトバ  合言葉 売り言葉 書き言葉 褒め言葉 
        言葉尻ジリ 言葉遣ヅカイ

「梯子ハシゴ」について
「竹梯子タケバシゴ  縄梯子ナワバシゴ  箱梯子」等はハシゴが連濁をおこした例外のようにみえる。しかし、これは複合語の元の言葉が問題となる。 
「橋と梯」について、和語では区別はないが、漢語では意味が異なる。
「橋」は二点を横につなぐもの。「梯ハシ」は高低のある二点をつなぐもの。
和語では橋も梯も「はし」で、二点をつなぐ同じ意味の言葉である。
「石橋 桟橋 太鼓橋 竹橋 吊ツリ橋 土橋 跳ね橋バシ 眼鏡橋」等、橋の種類は連濁をおこす。「竹梯 釣梯 箱梯 縄梯バシ」等、梯の種類も連濁をおこす。橋は固定されたものが多いが、梯は必要に応じて持ち運ぶことができる。
橋には「子」がつかないが、梯には「子」が添えられたと考える。
「縄梯子」はナワ バシゴではなく、ナワバシ ゴと考えられる。
辞書にも「梯の子」「箱梯」等の例もある。
「子」には「子供」「小さなもの」「親しみを表す接尾語」等の意味がある。
この他にも、木や竹で作られた物につけられる例「梃子テコ 背負子ショイコ 簀子スノコ」「板子ゴ 懸子ゴ 竪子タテゴ 破子ワリゴ」がある。
「梯の子」は、はしごの段という意味がある。
「梯子」は、日常よく使われた木や竹で作られた高い所に登る道具のことである。
連濁で言葉と言葉の結びつきを強めると同時に、言葉の切れ目も表している。
「彼岸桜ヒガン ザクラ  緋寒桜ヒ カンザクラ」もその例である。
[PR]
# by iwaoka3 | 2009-05-15 23:37
連濁と擬音語 擬態語
 ここでは擬音語・擬態語の中の同じ音を重ねた言葉のみを対象とする。「ぷい(と) ぴたっ(と)」等は連濁との比較の対象にならない。
1.擬音語(擬声語)は全て連濁をおこさない。 
擬音語とは実際の音をまねて言葉としたもの。前項と後項が同じ音の繰り返しで連濁をおこさない。単に同じ音の繰り返しである。
かたかた がたがた かんかん がんがん きいきい ぎいぎい ことこと ごとごと とんとん どんどん ばらばら ぱらぱら ばりばり ぱたぱた ぱんぱん ぴこぴこ ぽりぽり ぼりぼり  

2.擬態語は全て連濁をおこさない。
擬態語とは視覚・触覚など聴覚以外の感覚印象を言葉で表現した言葉。
からから きらきら ぎらぎら くたくた くるくる ぐるぐる さらさら ざらざら しとしと じめじめ すらすら ちくちく とろとろ どろどろ はらはら ばらばら ぴかぴか ひらひら ふらふら へなへな ぼろぼろ 

畳語が全て連濁をおこすのに対して、擬音語・擬態語は連濁をおこさない。連濁によって文法上の区別がなされている。
畳語  からがら ことごと しろじろ すきずき ふかぶか ほそぼそ 
擬音語 からから ことこと すーすー ひゅーひゅー ぼーぼー
擬態語 がらがら とことこ じろじろ ずきずき ぶかぶか ぼそぼそ 
[PR]
# by iwaoka3 | 2009-04-01 23:44
連濁と畳語
一、和語の畳語 
 「畳語」とは、「時時トキドキ」「晴れ晴れハレバレ」のように意味のある同じ言葉を二つ重ねて一つの言葉とした複合語である。後項にくる和語のカ サ タ ハ行音は必ず連濁を起す。このような重ね言葉に関しては、16世紀末頃から外国人に注目された。ポルトガル人のロドリーゲスも「日本大文典」の中の「濁りの用法」で、日本人は「上清スめば下濁る、下清めば上濁る」と言う、と述べている。この他ライマン・ヘボン・チェンバレン・アストンなど外国人の説があるが、何れも部分的な説である。 

 畳語に対して、「かんかん」「ちんちん」「すれすれ」「ひたひた」のように同じ音を二つ重ねた擬音語・擬態語は連濁をおこさない。
これまで畳語と擬音語・擬態語の区別がはっきりしていなかった。 
擬音語・擬態語は単に音や感覚印象を表現した言葉である。畳語は意味のある語を二つ重ねた言葉であるが、擬音語・擬態語は前半だけでは意味がない。
強強コワゴワし 形容詞の畳語(手ざわりがかたい ごつごつしている) 
強コワい    形容詞     ゴワゴワ    擬態語 
日本人は文法書などで習っていなくても、畳語と擬音語・擬態語とを意識の中で明瞭に区別しているのである。

和語の畳語は全て連濁をおこす。
畳語は言葉を二つ重ねることによって、次のような意味を表す。
イ、複数のものを表す 
方がた 神がみ 種ぐさ 口ぐち 国ぐに 声ごえ 心ごころ 事ごと 先ざき 
様ざま 然じか 下じた 品じな 島じま 下じも 隅ずみ 瀬ぜ 世ぜ 千ぢ 
月づき 時どき 所どころ 処どころ 端ばし 花ばな 日び 人びと 節ぶし 
其ぞれ 年どし 共ども 末ずえ 

ロ、状態や様子を表すもの 
一つの言葉では単に様子を述べているだけであるが、同じ言葉を二つ重ねることでそういう状態であるという意味も表す。
涸れがれ 代るがわる 消えぎえ 切れぎれ 細ごま 交ごも 怖ごわ 冴えざえ さめざめ 沁みじみ 好きずき 絶えだえ 散りぢり 取りどり 離れ離れ 
晴ればれ 広びろ 深ぶか 細ぼそ 仄ぼの 
甲斐がいしい 軽がるしい 神ごうしい 事事しい 寒寒しい 白じらしい 
騒ぞうしい 空ぞらしい 猛だけしい  捗ばかしい 花ばなしい 

ハ、強調 
同じ言葉を重ね合わせてその意味を強調する。
返すがえす 重ねがさね 予がね 辛がら 軽がる 呉ぐれ 黒ぐろ 粉ごな 
懲りごり 白じろ 精ぜい 高だか 近ぢか 熟づく 早ばや 遥ばる 冷えびえ 久びさ 惚れぼれ 

このように畳語は特別な意味を表すところが、単なる音響・音声をまねて作った語や感覚印象を表す擬音語・擬態語との違いである。畳語は連濁をおこし、擬音語・擬態語は連濁をおこさないところにも区別がある。

二、漢語の畳語
基本的に漢語は連濁をおこさないので、畳語も連濁をおこさない。
「近近」は漢語では「キンキン」と連濁をおこさない。和語では「ちかぢか」と連濁をおこす。
[PR]
# by iwaoka3 | 2009-03-01 23:26
連濁と日本語の特徴 
 我々が日常何気なく話している日本語には、今までの文法だけでは説明できないこともあった。日本語のもつ曖昧さや、言葉の意味の範囲がはっきりしないことも多い。文法用語に関しても、定義や範囲が明確でないものも多い。
接頭語、接尾語、畳語、擬音語、擬態語等がどのような特徴をもつ言葉なのか。定義や特徴が曖昧なまま使われてきた。
連濁の規則を見てゆく上で、これらの言葉の定義をはっきりさせることが必要である。そして、連濁がこれらの言葉の区別を表していることが明らかになってきた。
この他にも、いくつかの特殊な言葉のグループがある。それも連濁によって区別されていることが判明した。これらの特殊な言葉は、後に述べる連濁の一般的な規則とは別の独立したものである。
ここでは連濁とこれらの特殊な言葉についてみてゆきたい。まずは、連濁と関係のある日本語の特徴を簡単にとりあげてみよう。

一 複合語 
 日本語は単語の数が限られているが、非常に繊細な表現が多い。より豊かな表現をしようとすると、一つの単語では満足のゆく表現が出来なくなる。そこで、他の単語と結び合わせた複合語が多く使われるようになった。中には二つの単語では足りなくて「落ち着き払う」「見込み違い」「薄気味悪い」「青田刈り」のように、三つも単語を重ねる例もある。
単語の中には「する」「込む」「止サす」のように、単独ではあまり使われない言葉もある。「勉強する」「飛び込む」「食べ止す」のように、他の言葉と結びついて初めて具体的な意味が分かるようになる。
複合語が出来る時、名詞は「草の花→草花バナ 山の神→山神ガミ」のように、助詞「の」の脱落によって一語となった言葉も多い。
形容詞は「青い空→青空 丸い顔→丸顔 長い話→長話バナシ」のように、前項は語幹のみとなる。形容詞の語幹は名詞である。
日本語にはこのような複合語が非常に多い。
連濁はこの言葉と言葉を結び合わせた複合語に起こる。

二、濁音ではじまる言葉 
 日本語は大和言葉(和語)に多くの漢語と多少の外来語が混じり合った言葉であると前にも述べた。
本来和語には、濁音で始まる言葉がなかった。「出る」「抱く」は古くは「いでる」「いだく」であった。語頭の「い」が脱落したものである。
「だるい」は古くは「たるし」であった。
和語には語頭に濁音がなかったという事が、連濁をおこす要因の一つである。
「亀」という言葉をみてみると、「海亀・象亀」のように「がめ」と連濁をおこしても、混乱をおこすことはない。「がめ」という言葉がないからである。

三、和語は対になった言葉が多い。
 和語は対になったものは、完全なものとして好まれる。いろいろな言葉が対になって、使われている。
1.自動詞と他動詞(意志動詞と無意志動詞という別の分け方もある) 
集まる  集める     飛ぶ   飛ばす    見える  見る  
曲がる  曲げる     出る   出す     聞こえる 聞く  
回る   回す      付く   付ける  
続く   続ける     下がる  下げる  
散る   散らす     入る   入れる  

2.名詞と動詞の呼応 
 言葉は名詞から動詞が、動詞から名詞が作られる。
「メモ」から「メモる」ができた。
「欲張り 欲張る」「受付 受け付ける」のように、名詞と動詞が対になっている言葉もある。これを名詞と動詞の呼応という。
「名詞と動詞の呼応」に関しては、後に文法の項で詳しくのべたい。

3.代名詞 
日本語には、話者からの距離によって近い方から「こ そ あ」と疑問詞の「ど」で始まる代名詞がある。これらの代名詞は対というよりは、グループとなって距離を示す。
日本人は、内と外をはっきりと区別している。それは自分が属しているグループの中は内である。そのグループは家族であったり、職場であったりする。
最近では交通機関の発達により、世界に対して日本というグループも考えられる。
これ この こう    ここ  こちら こっち    こなた こいつ 
それ その そう    そこ  そちら そっち    そなた そいつ  
あれ あの ああ    あそこ あちら あっち    あなた あいつ 
どれ どの どう    どこ  どちら どっち    どなた どいつ  

4.「ある」と「いる」 
「机の上に本があります」「籠の中に鳥がいます」のように、「ある」と「いる」には使い分けがある。本と鳥ではどこが違うだろうか。鳥は生きているが、本は生き物ではない。命あるものには「いる」を使い、命のないものには「ある」を使う。植物は生きていて、命はあるが意志をもって動くことはできないので「ある」を使う。

四、擬音語・擬態語
和語は擬音語・擬態語が多い。これは形容詞が少ないこととも関係がある。
この項目もこの章の、連濁をおこさない言葉の説明でとりあげる。

五、日本語はテンスがはっきりしていない。
日本語にはテンスがないとよくいわれる。未来形がないのである。だから英語を訳す時に困る。「行くであろう」などと、苦しい訳をしていた。
未来は推量するしかない。
「明日行きます」と現在形が未来を兼ねる。
それに対して過去形はある。この過去形が過去を表すだけでなく、完了も表す。
「宿題をした」「雨が止んだ」「ご飯を食べた」等は完了の意味が強い。
古い日本語には「き けり つ ぬ たり」等の助動詞が使い分けられていた。「き けり」は過去を表し、「つ ぬ たり」は完了や存続を表した。
これが現代語では「た」のみとなった。従って「見た 来た 行った」は過去だけでなく、完了や存続も表す。
このように、日本語は過去・現在・未来というとらえ方よりは、完了したか未完了かというとらえ方の方が強い。現在と過去は現実の事柄である。未来は不明であるので、未確認である。
複合語においても特殊な接続をして、完了に関する意味を表す言葉がある。
それは従来連体形接続といわれた言葉である。
動詞や形容詞は名詞や他の動詞などと結びつく場合、連用形の形で結びつく。
「書き言葉 嬉し涙 聞き飽きる 当り年」等がその例である。 
「行く年 来る年」のような従来連体形接続といわれた特殊な接続がある。
数は少ないが何故あるのだろうか。これは連用形接続の言葉と意味が異なる。
文法の項で詳しく解説するが、「行く年 来る年」は未完了や未確認を表して連濁をおこさない。連用形接続は連濁をおこす言葉と連濁をおこさない言葉がある。
「若い人」「黒い霧」のように、形容詞の連体形接続といわれた言葉も連濁をおこさない。

六、日本語の単数と複数について 
日本語は複数に関しては、名詞の語尾変化で表すということはない。
「神」「花」と言葉を二つ重ねない場合は、単数を表す場合が多い。
「神々」「花々」となると、複数の神や花を表す。しかし、単数と複数の区別が厳密ではない。「花が咲いている」の場合、一つでも二つでも沢山でもよい。
英語のように語尾に「S」をつけて複数を表すということはない。
日本語は「多くの~」「少しの~」の様に言葉の前に追加して、量の多少を表す。けれども、花が一つか二つかは問題ではない。
「花々」の場合も、二種類以上の花を指しているのであって、花の数をいっているのではない。「桜の花々が咲いている」とは言わない。梅や桜は一本の木に数えられないほど、多くの花をつける。しかし、桜の花である。
英語では必ず「Cherry blossoms」と複数の「s」をつける。
「花々」は「百合と桔梗とバラ」のように、異なる種類の花の場合に用いる。 
キリスト教やイスラム教の神は一つである。大和には「八百万ヤオヨロズの神」がある。これは神様の数を数えたわけではない。八百も万も「多くの」という意味で、数にこだわりはない。古くは八や九や十でも「多くの」という意味があった。
「達」や「ら」は「子供達タチ 子供ら」「学生達タチ 学生ら」と複数を表す言葉である。しかし「友達ダチ」は一人でも二人以上でもよい。
「友たち」となれば、複数のみをあらわす。
「達」は古くは、主として神または貴人(公達キンダチ)だけに用いられる敬意の程度が高い言葉であった。それが時代が下るにつれて複数の形で軽い敬意を表すようになり、今では敬意はなくなった。敬語であった「貴様」や「お前」のように、敬意の度合は時代と共に下っていく。 

七、音便 
日本語には発音をしやすくするために、もとの音とは違った音に変る音便という現象がある。主に五段活用動詞の連用形におこり、イ音便・ウ音便・促音便・撥音便の四種がある。  
イ音便 書きて→書いて  嗅ぎて→嗅いで  咲きて→咲いて  
ウ音便 早く →早う   白く →白う   丸く →丸う
促音便 思ひて →思って  蹴りて→蹴って  持ちて→持って  
撥音便 畳みて→畳んで  死にて→死んで  呼びて→呼んで  
動詞活用語尾の「に」「び」「み」が撥音の「ん」になる。
この音便・特に撥音便がある為に、連濁が起こるのは発音によるものという意見があった。
しかし、連濁は日本語の中でもっと大きな働きがあることが分かった。
[PR]
# by iwaoka3 | 2009-02-01 22:03
「連濁と日本語」 はじめに 
 我々は日常、言葉が自然に口から出てくる。それがどんな規則によって話されているかなど考えない。無意識の内に皆が同じ規則に従って話している。その規則が文法である。だが、文法と聞いただけで頭が痛くなる。しかし、我々日本人は無意識の内に文法をきちんと理解し、文法に従った文を作ることができる。
これから述べる研究は、その日本人が無意識にもってはいるが、どんな規則によってそうなるのか分からなかったことについて見てゆきたい。
日本人が持っている言語意識と、日本語の新しい側面が見えてくる。
それを「連濁」という現象を通してみてゆきたい。その連濁の生じる条件を見てゆくと、日本人が日本語について無意識のうちに、どんな認識を持っているのかということも明らかになってくる。
それが日本文化と密接につながっていることも分かる。

 日本語は単語の数をふやすために、二つの言葉を結び合せて複合語を多く作った。この言葉と言葉を結び合わせて複合語を作るとき、後ろの言葉の頭の清音が濁音に変ることを連濁という。
「勉強」と「嫌い」で「勉強ぎらい」
「花」と「盛り」で「花ざかり」
「神」と「頼み」で「神だのみ」
「噂」と「話」で「噂ばなし」
「勉強」「花」「神」のような複合語の前半にくる言葉を前項、「嫌い」「盛り」「頼み」のような後半にくる言葉を後項と呼ぶことにする。
連濁はカ・サ・タ・ハ行音に起こる。その四行の音節は無声子音と母音の組合せで出来ている。有声子音と母音による音節の組合せであるナ・マ・ヤ・ラ・ワ行には連濁は起きない。 ka sa ta ha の無声子音がga za da ba(pa)の有声母音に変化するのが連濁である。
しかし「三階ガイ・三回カイ」を見れば分るように、全ての言葉に連濁がおきる訳ではない。後項の言葉が連濁を起す言葉と起さない言葉がある。それにはどんな条件があるのだろうか。これは長い間、国語学界の謎とされてきた。

 日本人がこれまであまり興味を持たなかった事の一つに、連濁という現象があった。古い日本語の研究は、江戸時代に盛んになった。しかし、連濁は長い間、日本人にはあまり省みられなかった。室町末期に日本に来たヨーロッパ人が興味を示したのが最初である。
室町時代からロドリーゲス(畳語について)やライマン、チェンバレン、ヘボン等外国人の説がある。いずれも部分的な説で、連濁の謎を全面的に解き明かすには至っていない。
連濁に関して、古くは外国人の説が多く日本人の説がほとんどなかったのは何故か。それは、日本人にとってはごく当たり前の事が、外国人には難しかったからである。例えば、物を数える時、人間は「ひとり ふたり さんにん」。紙は「いちまい にまい さんまい」。値段は「ひゃくえん にひゃくえん さんびゃくえん」となる。鉛筆は「1ぽん 2ほん 3ぼん」とホンが ポンになったり ボン になったりする。数えるものによって、使う言葉がそれぞれ異なるうえに、「ひゃく」がビャクになったりする。日本人なら子供の時から自然に言葉が出てきて、これを間違えることはない。問題がおこらないから、注目しなかった。

 神様は「死に神 貧乏神 守り神 女神」等が連濁をおこし、「天照大御神 なる神 山の神」等は連濁をおこさない。
連濁をおこすには、いろいろな要因がある。
連濁には、これまで目を向けられなかった日本語の特徴が多く込められている。

 言葉は年々変化していく。枕詞「天翔ガケる」は万葉集では「ガケル」であるが日葡辞書(17世紀始め)では「アマカケル」である。「足引の」は万葉集では「アシヒキノ」であるが、後には「アシビキノ」となった。一つの言葉でも時代によって清音であったり、濁音であったりする。 
言葉は文化や歴史と密接な関係があるので、中には古い言葉も出てくるがなるべく新しい言葉をとりあげた。連濁は話し言葉におこるから。
農業や商業や工業に携わる集団の中での専門用語等も、連濁による使い分けがあるようである。しかし、専門的な知識に基づく言葉の使い分けは我々には難しい。
また、武士の世の中では、独特の思想や生活、衣装や刀等に関する用語がある。
いろいろな用語がその集団の中で、連濁によって、詳しく使い分けられていた。
連濁は、日常使い慣れた言葉が必要に迫られておきるのである。
この研究では、現在の言葉を主に解説したい。

 この研究は広辞苑第四版を基にした。濁音か清音か、その言葉の意味・読み仮名・送り仮名など全て広辞苑に従った。
読みにくいと思われる語の読み仮名は、小さなカタカナで漢字の右側に付け加えたものもある。
日本語は今の日本で普通に使われている言葉である。大和言葉に多くの漢語や多少の外来語が混じり合った言葉である。
日常あまり使わなかったり、使い慣れていない漢語や外来語は連濁をおこさない。
最近、英語などの西欧の言葉が数多く入ってきた。しかし、それらの言葉は今のところ外国の言葉であり、日本語のように自由自在に使いこなすのは難しい。このような言葉は連濁をおこさない。また、その意味を正確には理解出来ていない言葉も多い。新しい文化と共に入ってきた外国語(多くは名詞)が日常使われている。それらの外来語は、日本語に置き換えられない言葉も多い。その中には、長い年月の後に、日本語となって連濁をおこす言葉がでてくることも考えられる。その時も、これから述べる連濁の基本的な規則だけは受け継がれる。

 この研究は、私の大学時代の恩師大野晋先生が、最初から最後までご指導下さったお陰で完成した。先生のライフワークとも言える「弥生文明と南インド」(岩波書店)のお忙しいご研究中にも拘わらず、全て目を通してアドバイスをいただいた。ここに心からの感謝とお礼を申し上げるとともに、昨年八月にご逝去なさった先生のご冥福をお祈りいたします。
[PR]
# by iwaoka3 | 2009-01-01 23:46